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2012年2月12日

アレクセイ・リュビモフの静謐な音楽


今日はピアノ・ソロの素敵な一枚のアンソロジーのご紹介。


ある音楽または演奏をもって「静謐」という表現は相応しくないと思うのだが、この一枚にはこの言葉がしっくりくるのだ。


2000年の録音であるが、あるショップのバーゲンコーナーで目にとまり入手したECMの一枚。
タイトルは「Alexei Lubimov Der Bote」。Der BoteとはこのCDの最後の曲の題名であり、ウクライナの現代の作曲家シルヴェストロフの曲。Der Boteは英語ならば「The Messenger」。作曲家自身がメッセンジャーであり、また演奏家もメッセンジャーであるわけだ。そしてリュビモフはこのCDで聞き手に何を伝えているのか。17世紀から今日に至る9名の作曲家による10曲の「エレジー」を集めリュビモフの声で語った一枚となっている。瞑想、憧憬、祈り、憂い・・・。このような感情が表現されている。ECMらしい残響を伴った硬質の美しい現代のピアノの音で。


解説書をめくると  Alexei Lubimov Vestnik   Elegies of piano     for my wife Aza  とある。

曲目は次のとおり。


C.P.E Bach      Fantasie fur Klavier fis-moll      
John Cage      In a landscape
Tigran Mansurian      Nostargia
Franz Liszt      Abschied
Michail Glinka      Nocturne f-Moll
Frederic Chopin      Prelude cis-Moll op.45
Valentin Silvestrov      Elegie
Claude Debussy      Elegie
Bela Bartok      Vier Klagelieder Op.9a,Nr.1
Valentin Sivestrov      Der Borte  




17世紀のカール・フィリップ・エマニュエル・バッハからケージやシルヴェストロフの曲までがすべて作曲年代の違いを超えて先に述べたような感情を湛えた音楽として演奏される。ネイガウスの最後の弟子リュビモフの表現もそこを狙っていると思うのだが。そして最後(10曲目)のDer Borteを聴くと、聴き手は7曲目の作曲家と同一の作曲家の作品とは信じがたいという思いになるし、まるでC.P.Eバッハの時代に戻ったかのような感覚に陥る。どこかで耳にしたような旋律がDer Boteで聴けるのである。


音楽はいつの時代にあっても、人の心に何かを語りかけるものでなければいけない。





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