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2012年7月1日

女はみんなこうしたもの















私は常々モーツァルトの楽曲のなかで最もモーツァルトらしいエッセンスが詰まった曲はピアノ・コンチェルトとオペラといったジャンルにあると考えている。ところがこのブログではこれまでモーツァルトのオペラについてはく「ドン・ジョバンニ」に関して3回触れただけである。いわゆる「コシ、ドン、フィガロ」を3大オペラとすることに全く異論は無いのだが、もちろん魔笛」や「イドメネオ」、「後宮からの逃走」などもそれらに引けを取らないどころか、それぞれ独自の魅力を持っていて捨てがたい。


だから触れるべきオペラは多いのだが、今日は「コシ・ファン・トゥッテ」について。


「ドン・ジョバンニ」は当然ながらその主役はジョバン二であり、そしてレポルロ、エルヴィラなどが重要な位置を占める。「コシ」の場合は主役はフィオルデリージとドラベッラの姉妹である。この二人が誰かによりオペラの成功が決まると言っていいかもしれないのだが、ただこのオペラの声楽部とオーケストレーションを考えると室内楽的な要素が強いので声楽の一人一人の技量、管弦楽のそれぞれのパートの力量、緻密さが必須であると思う。そして声の力や勢いだけでもはどうにもならない、全体的なしっかりしたアンサンブルと構成が求められる。


だからこそ「魔笛」や「ドン・ジョヴァン二」と比べると一見地味であるが、聴き込むにつれて味わい深さを増すのが「コシ・ファン・トゥッッテ」なのだ。


話自体はくだらないと決め付けてよいほどどうでも良い話なのだが、しかしちょっと考えれば人生の真理を何気に語っており、決して「喜劇」の一言でかたずけられないものがある。もちろんそれはモーツァルトの単純に見えるが幾多の感情が凝縮された音楽にもよるところなのだけれど。何気ないことの繰り返しが人生であり、どうでも良いことの中に機微があるものだと。


さて、演奏は何を選ぼうか。


お気に入りのピラール・ローレンガーとテレサ・ベル・ガンサの姉妹。ショルティ指揮のロンドン・フィルの演奏が好ましいと思う。キャストは素敵なスペインの名花二人のほか、トム・クラウゼ(グリエルモ)、リランド・デーヴィス〈フェランド)、ジェーン・ベルビー〈でスピーナ)、ガブリエル・バキエ(ドン・アルフォンソ)。全体をしっかりショルティが引き締めている。





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