Translate

2010年3月12日

引退



その昔、高校生だった頃、一眼レフを三脚に固定し蒸気機関車が近づくのを待ったものだ。
小淵沢、遠賀川、会津坂下・・・。それはべつにSLが無くなるからとか、消え行くSLに郷愁や愛惜の念を感じたからということで写真撮影をしたということではなくて単に旅行がしたい。写真を撮りたい。とう衝動からで、たまたま友人が鉄道のクラブに入っていたから見よう見まねでSLを撮ることにしたということであった。


今日も仕事が終わり、同僚と一杯引っ掛け帰ろうとした時、同僚から金沢駅のホームに行こうと誘われた。もっとも駅ビルのなかで食事をしていたので2分でホームに着いた。



12日が最後であるが、今日11日もすでにファンで混雑しているはずとのこと。そう2010年2月12日で金沢-上野の寝台特急「北陸」は無くなり、同日黄色いボンネット型の急行「能登」も無くなり、車体も引退すると言う。その2つがこの金沢駅でほぼ同時に見納めることができると言う。


鉄ちゃんにとっては相撲ファンの朝青龍の引退以上の事である。


今日は千秋楽ではなかったが鉄ちゃんたちが写真を撮ろうと大勢いた。警察官や駅員も多く動員され、列車との接触事故や転落事故を防ぐため笛を鳴らしたり大声で鉄ちゃんたちに注意を促していた。しかし鉄ちゃんたちは無言でしかも整然と写真を撮り続けている。こんなに人が多いのにお互いまったく邪魔しあうことはせず整然とシャッターを切る。

大相撲とは違う。内に秘めた情熱。声援も罵倒もない。そう列車はいつも整然と時刻どおりに到着し出発する。それを撮るのみ。列車は毎日毎日の繰り返し。サラリー-マンと同じではないか。自分と同じ。定年退職のその日。こんなに多くの人が写真を撮りには来ないが。


私は鉄ちゃんでないから客観的にその人たちの動きに注意をはらい、さらには昔の自分を思い出しながらデジカメのまったく重量感のないシャッターを押したのであった。



 

0 件のコメント:

コメントを投稿