大昔のことだが、FENという駐留米軍向けのラジオ放送があって、たまにクラシック音楽が流れることがあり、フリッツ・ライナーのシカゴ響やシャルル・ミュンシュのボストン響の音楽が聴けたものだった。ある時、「春の祭典」にちょっと似ているなと思う曲が流れた。一部しか聴けなかったのだがエドガー・ヴァレーズの「アルカナ」という曲で、ジャン・マルティノン指揮のシカゴ響の演奏であった。
さて、この曲をもう一度、そして全曲とおして聴こうと思い立ち、上野の文化会館の音楽資料室で同じ演奏者の同じ曲目を探し出し、資料室のブースのヘッドフォンで聴いた。
もう記憶が定かではないのだが中学か高校の頃だったかと思う。・・40年?前(はぁ。)
それ以来聴いていなかった「アルカナ」を、CD時代になってからケント・ナガノの演奏で見つけて購入したのが7年ほど前。そしてその2枚組CDには「アルカナ」だけではなく「アメリカ」、「イオ二ザシオン」などヴァレーズの曲ばかり11曲も収録されていた。数多くの打楽器。サイレン、声、雑音。現代音楽の走りを見る(?)思いと何か映画音楽のようにも思えた。
1966年にマルティノンが何故ヴァレーズを、何故「アルカナ」を取り上げて録音を残したのだろうか。マルティノン自身も作曲もし自作の録音もあるが、彼としてはめずらしい選曲。ヴァレーズが唯一の現代音楽といっても良いかもしれない。
実は3年前にマルティノンの「アルカナ」を手に入れた。FENでの「ヴァレーズ」との邂逅の想い出と、そのCDの収録曲の妙で、内心ニヤニヤしながらCD店で購入したのである。フィルアップはバルトークの「不思議な役人」、ヒンデミットの「気高い幻想」。マルティノンとしては唯一先鋭的な録音であっただろう。しかし考えればバルトークとヴァレーズは同世代なのだ。
シカゴ時代、フランス人指揮者マルティノンは不遇であった。(本人も言っている。)ヴァレーズは1883年にパリで生まれたが後に アメリカに帰化し、1965年にアメリカで亡くなっている。そしてこのマルティノンの「アルカナ」は作曲者の死後の4か月後の1966年3月に録音された。
付記:
不遇といいながらマルティノンとシカゴ響との録音はどれもこれも素晴らしい。
とくに「アルルの女」やラヴェルの管弦楽曲集は最高。
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