楽曲にはいろいろなアプローチが可能である。いつぞやドビュッシーの「海」について、「印象派のイメージ」に近い名演奏ということで、ジャン・マルティノンの録音をあげたのだが、しかし今、この名曲の演奏で第一に推すのは、エフゲニー・スヴェトラノフがフィルハーモ二アを指揮した1992年の教会でのセッション録音。
指揮者のイメージから男性的な決然とした演奏を想像するかもしれないが、各楽器を克明に演奏させ、木管、金管、弦楽器、それぞれの楽器が良く聞き分けられるので、だから楽器たちの絡み合いの妙、ドビュッシーの見事なオーケストレーションの神髄を伝えてくれるのだ。しかも打楽器の潔い決然さはいつものスヴェトラノフである。精緻さと強さを兼ね備えた見事な演奏だと思う。印象派の絵画というより、より写実的な絵画の趣。
それから、このCDはほかに、三つの夜想曲、牧神の午後への前奏曲が聴けるのだが、作りかたは一緒でこれらもまた克明で美しい演奏だ。
Yevgeny Svetlanov
The Philharmonia
The Sixteen(chorus)
Kenneth Smith(flute)
Recorded at St.Augustine’s Church,London
過去の記事:海 La Mer〈2010年11月)
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