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2011年5月18日

悲しみ、そして慟哭。 トマス・シッパースで聴くバーバー アダージョ

オリバー・ストーンの映画「プラトーン」で使われた有名なサミュエル・バーバーの「弦楽のためのアダージョ」。その音楽は当時映画を見終わって数日間脳裡から離れなかった。狂気の戦闘シーンの最後の方。暴力の背景にある憎しみや、戦争の虚しさ、そして悲しさ。オリバー・ストーンの徹底的に過酷なそして絶望的なシーン。バーバーの旋律が映像とシンクロして凄い効果をあげていた。

その「アダージョ」の演奏で深い悲しみを十分湛えた演奏はあまり多くないように思われる。唯一私が推すのはトマス・シッパースがニューヨークフィルを振った演奏。


オランダ系のアメリカの指揮者トマス・シッパースの本領はオペラである。私は彼の覇気あるオペラ演奏が好きで多く聴いてきた。以前デッカに録音した「カルメン」についてふれたがそれは私の愛するCD。トロヴァトーレ、マクベス、運命の力などヴェルディはどれも良い、あとフレーニが歌ったボエームなど。シンシナティ響の常任指揮者になったけれど、やはり彼の本領はオペラ。オペラに生きた指揮者。しかしシッパースは自国の同時代の作曲家の演奏も得意としていた。バーバーやジャン・カルロ・メノッティの管弦楽曲やオペラもよく演奏したしCDにも残されている。

その彼のバーバーの作品集のCDのジャケットには彼の写真が沢山掲出されているのだが、火のついたタバコを手にした写真が多くある。同じ米国の指揮者レナード・バーンスタインも1日500本のヘビースモーカーであったが、シッパースも同様。肺癌でわずか47歳の生涯を閉じたシッパースは、米国の作曲家、バーバー、メノッティとも親交があった。

バーンスタイン、シッパース、バーバー、メノッティの4人には共通点がある。バーンスタインとバーバーとメノッティはカーチス音楽院の同級である。バーンスタインより12歳若いシッパースもカーチス出身。(ジュリアードでも学んだが)またこの頃の米国のアーティストは多くそうであったらしいのだが、4人ともゲイである。
Thomas Schippers

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