親しみ易い旋律を多く書いた作曲家、ジョルジュ・ビゼーはちょいと気になる存在である。南欧の 明るい色彩。叙情的であり、劇的であり。
ここに、レジーナ・レズニックがタイトルロールを、マリオ・デル・モナコがドン・ホセを歌った「カルメン」のCDがある。愛聴盤である。指揮は肺癌で47歳で死んだトマス・シッパース。ジョン・カルショーの1963年の録音。シッパースにしては飛ばしすぎず、あまり上手くないスイスロマンド管を克明にドライブしている。デッカの録音もかなりデッドであるがそれが却ってオペラハウス風であるし、ビゼーのオーケストレーションがよく見える。それぞれの楽器がくっきりそして色彩的に捉えられている。
レズニックもメゾ転向後の十八番。カルメン。知性を感じるカルメン。とても良い。
私の記憶では、過去から何故かほとんど見過ごされてきた録音であると思うのだが。どうしてなのだろう。それは同じ1963年に録音されたカラヤン指揮ウイーンフィルによる「カルメン」(カルメン=L..プライス、ドン・ホセ=F.コレッリ)の存在があったから。またあのカラスの「カルメン」も1964年に録音されている。そう当時「カルメン」といえばカラスの「カルメン」と、カラヤンの「カルメン」が評価が高かったのだ。この2つのいわゆる「名盤」の陰に埋もれてしまったのである。
しかし私には解せないところがある。
プロデューサーとしてカルショーはレズニック、モナコの「カルメン」を製作した。また同時に彼はカラヤン・ウイーンフィルの「カルメン」も製作した。(カラヤンのRCA盤も製作はカルショー・DECCAチーム。当時はRCAとDECCAは提携関係にあった。)一人のプロデューサーが同時期に2組の同じオペラの全曲の録音をしたのである。いかにレコード業界の黄金期とはいえ、時間と人と金をかけるのなら、最高の一組を作る努力をするのが普通ではないか。良くも悪くもカルショーは普通ではなかったということだろうか。
私がプロデューサーであったならば、カルメンはレズニック、ドン・ホセはコレッリ。シッパース指揮ウイーンフィルで製作したのだが・・。でもオペラだから映像も製作してしまおう。カルメンはカラスかモッフォ、ホセはコレッリ、ミカエラは・・・・・・。くだらない話はここらで止めにしよう。
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