桐朋出身の指揮者が14人も登場しオーケストラを振る。その音楽会、「指揮者の祭典」というコンサートだから小曲を沢山聴くことになるのかな、ということで二の足を踏んでいたのだが、結果大変素晴らしいコンサートであったので行って大変良かった。もちろん指揮者の役割は重要なのだろうが、指揮者がどうのと言うことよりも桐朋出身の名手たちから成るオーケストラの演奏が非常に素晴らしかった。そしてそのことがコンサート成功の主因である。
オケのしんがりは飯守泰次郎のマイスタージンガー前奏曲。この曲で鳥肌がたつとは思わなかった。特に弦楽器の合奏の、滔々と流れる旋律美は世界最高峰の合奏と言っても過言ではないだろう。
私が実演で初めて聴いたワーグナーは二期会のタンホイザー。飯守の指揮であった。先日も新国立ではツェムリンスキーとラヴェルのオペラで素晴らしい指揮を聴かせて貰ったし。彼は本場でのオペラ経験が豊富。
そういえば武満作品を振った井上道義は若い頃にウイーン国立歌劇場だったと思うが、観客として見かけたのを思い出した。勉強していたのだろう1970年代の終わりごろのことだ。最近では私が金沢に赴任中の3年間、アンサンブル金沢で何回も聴くことが出来たが、白眉はNJPとの合同演奏会のマーラーの第3番。
トリを務めた秋山和慶は火の鳥を振った。私が学生の頃、ヘンリク・シェリング来日時の伴奏ではあったのだが、ベートーヴェンのコンチェルトが立派であったことを思い出した。当時は小沢の派手さの陰にあり地味な感じではあったが確かな演奏をすることでわれわれは一目を置いていた指揮者であった。当夜の火の鳥、ホルンのミスはあったが素晴らしい演奏であった。
ソリストについてもチェロの長谷川陽子、パーカッションの安江佐和子などなど、感動を与えてくれた演奏家が沢山いるのだが、続きはまたの機会に。
実はこのコンサートの前後に今絶好調と言われている読響を同じホールで聞いたのだが鳥肌はたたなかったなあ。
日本の西洋音楽演奏の歴史を芸大とともに作ってきた桐朋学園のしかもその桐朋出身のなかでもエリートたちの演奏を聞き、その演奏から感動を得るとともに、過去からの様々な感動の瞬間が思い出された。私にとってそんな一夜であった。(つづく)
- 曲目
- ワーグナー: 『ニュルンベルクのマイスタージンガー』前奏曲
- ストラヴィンスキー: 組曲『火の鳥』(1919)
- エネスコ: ルーマニア狂詩曲第1番 イ長調
- 武満徹: 弦楽オーケストラのための 3つの映画音楽 から
- ドヴォルザーク: スラヴ舞曲 ハ長調 op.46-1,op.46-8, op.72-2
- ブラームス: ハンガリー舞曲第1番 第5番
- 指揮
秋山和慶、飯守泰次郎、黒岩英臣、井上道義、大山平一郎、増井信貴、高関健、北原幸男、大友直人、梅田俊明、山下一史、曽我大介、寺岡清高、十束尚宏
- 出演
- 徳永二男、豊嶋泰嗣(Vn)、店村眞積(Va)、堤剛(Vc)ほか
- 演奏
- 桐朋学園同窓会オーケストラ
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